負け犬の髪はなびくか「コン・エアー」
黒ゴマが髪の毛にはいいらしい
(評価 74点)
というわけでコン・エアー。勿論、過去に見た作品だ。しかし、近頃ニコラス・ケイジが何だかやけっぱちらしいという風のうわさを耳にしてまた十数年ぶりに急に見たくなった。
正当防衛で犯した殺人罪により服役中のキャメロン・ポー(ニコラス・ケイジ)。そのポーが仮釈放となり、家路につくために乗り込んだ囚人輸送機が、同乗するサイラス(ジョン・マルコビッチ)たち凶悪犯に乗っ取られ・・・以降の展開はいわずもがな。
いやあ~十数年ぶりの杞憂も何のその、男気あふれる快作だった。
今回、気付いたのは、本作がただのストレートな活劇ではなく。複層的な構造になっていること。ダイ・ハードはあくまでも善の警官vs悪のテロリスト。しかし、本作の場合、悪の側の凶悪犯たちの生き残りをかけた逃走劇のテイストが加わることで、一層、そのエキサイト度が増している。
それに加えて、この作品、空のみならず、陸側のジョン・キューザックを始めとする連邦捜査官たちの動向も同時進行で描き、さらに輸送機がランデブーポイントの空港に不時着した後、統率力に長けたサイラスの抜群のリーダーシップで軍隊に立ち向かい繰り広げる攻防戦といった具合に、アクションそのものもきわめて立体的になっている。そして、戦場さながらの修羅場で、傷つきながらも死を賭して立ち向かうその姿には思わず肩入れしてしまうのだ。
だが、どんな激闘下にあっても、ポーの目的があくまでも家路に着くためなのも良い。加えて絶妙なアクセントになっている狂言回し的なスティーブ・ブシェミの存在。エンディングでニヤリとさせてくれるのもこのブシェミだ。
やがてなだれ込む、壮絶なラスベガスへの不時着シーン。一旦、落着後、消防車に乗って尚も逃走を図るサイラスを発見したポーが、サイラスを追跡すべく捜査官のキューザックと揃い踏みで白バイにまたがった時には思わずWHAO!と快哉を上げた。そして、実にきっちりとラストでは妻とそして写真でしか見ることが出来なかった娘との再会シーンで泣かせてくれる。
といった具合に、改めてブルーな時に見ればメンタル面でもポジティブになれるアクション快作として、ただのウエルメイドではちょっと済ませたくない重宝な作品だった。
それにしてもいつも髪の毛の話題ばかりがクローズ・アップされるニコラス・ケイジ。負け犬の髪の毛はとうに終わってしまったけれど、未だに、かろうじてあるのか無いのか、それとも模造品なのかハッキリしないニコラスの髪の毛はどんなサスペンスよりもサスペンスフルだ。