負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬が漆黒で獰猛な青い稲妻にエキサイトした件「ブルーサンダー」

スーパーヘリとカイユースの超低空でのチェイスに度肝抜かれるメカ映画の快作!

(評価 76点)

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 いくつになっても子供心をくすぐられる映画と言えば、サンダーバードのようなイカビークルが登場するスーパーメカ映画。本作は80年代前半の時代の勢いと共に唸りを上げて登場した、そんな心躍るメカ映画の一本。

 とにかく本作の、イケてるテーマ曲が開口一番流れ出せば、いやでもあのエイティーズのあの頃映画の気分に浸れるのがまずいい。そのテーマ曲をバックに登場するのが、本作の主役、LAの航空隊のパイロット、フランク・マーフィー。このフランクに扮するのがロイ・シャイダー。更にはフランクの直属の上司のブラドックがウォーレン・ウォーツとくるわけで、もうメンツだけでもセブンティーズが勇躍エイティーズになだれこんできたかのようで、その時代の映画フリークとしては、もうイントロだけで心をくすぐられるものがある。

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 本作、スーパーメカ映画だけあって、主役はそのものずばりのスーパーヘリ、ブルーサンダー。そもそも本作は、そいつが怪獣よろしく登場し、LAの町を暴れまわるのを指をくわえて見るだけの映画と言って良い。だから、ストーリーなど二の次でいわば、ただアクション・シークェンスにあてつけただけの程度、しかし、CGなどワンカットも存在し得なかった時代に、実機を使用して実際のヘリチェイスを、当時としては空前絶後の最高の技術でフレームに収めてくれれば何も文句は言えない。それほどまでにクライマックスのチェイス・シーンは、今見ても圧巻の完成度を誇っている。

 いつものようにルーチンのスカイ・パトロールをこなすフランク、しかし、警察内部では、対テロリスト用のスーパー・ウェポンが極秘裏に開発されているというのが本作のメインプロット。たまたまフランクがパイロット中、議会の安全保障に関わる議員が暴漢に射殺される事件を空中から目撃する。

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 ただの強盗事件だと敢えて言い張る上層部に不信を抱いたフランクは自力で、事件現場を捜査し始める。しかし、そんな時、フランクに白羽の矢が立ったのがLA市警が新たに開発したスーパーヘリ、ブルーサンダーのテストパイロットの大役だった。

 というわけで演習所に連れていかれたフランクはそこで初めてブルーサンダーと対面する。朝焼けの太陽をバックに、漆黒のシルエットとなって、ここで初お目見えするブルーサンダー、そしてそのBGMには本作のテーマ曲、まるでゴジラを思わせるシルエットが唸りを上げてこちらに向かってくるシーンのエキサイティングなこと。

 本作は、また職人監督だったジョン・バダムがツボを押さえたアクション演出の冴えを見事に見せつけてくれる作品でもある。アクションドラマに不可欠な要素が天敵の登場。ここでフランクが対峙するのがベトナム時代のトラウマの原因ともなっている仇敵コクラン。このコクランをこれまたセブンティーズの名バイプレイヤー、マルコム・マクダウェルが如何にも憎らしく演じているのがいい。

 獰猛さを強調するために、敢えて角ばったデザインが強調されたルックスのブルーサンダー。あの「ロボコップ」然り、スーパーメカのプロトタイプが活躍する映画に、必ずといっていいほど高揚感を覚えるのは何故だろう。

 スーパーメカといっても、その装備にアクチュアリティがあるのも本作の魅力。当時は画期的だった、パイロットの視線連動型のキャノン砲をはじめ、ヘリのローター音を極限までトーンダウンさせるサイレントモードにいたるまで、現在、全ての装備が実用化されているらしい。

 そんな完全装備の空の要塞のようなブルーサンダーの試験飛行で、フランクはコクランの車を空から追尾し、連邦庁舎での対テロ活動に関する謀略の密談を盗聴。冒頭の強盗事件も、計画を曝露しようとする議員を殺害するためのコクランの仕業だった。その証拠のテープをめぐってなだれこむのがクライマックスに至る展開。

 フランクは、テープをTV局に届けようと車で疾走する恋人キャサリン(キャンディ・クラーク)を空から援護し、キャサリンが無事にテープを届け終えるのを見届けるや、いよいよお待ちかねのカイユースに搭乗したコクランとの一騎打ちになる。

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 実際にLAのダウンタウンで、実機が路面すれすれ、壁面すれすれに飛び交うこのシーンは、今見ても圧巻の一語に尽きる。撮影スタッフたちの熱気と根性がストレートに伝わって来る、こういうシーンを見ていると、現在の何でも簡単に出来てしまうCGの功罪を感じずにはいられない。ただ単に映画をコンテンツとして供給するだけなら、CGは便利には違いない。でも、そこにはやっぱりアナログなガッツがない。

 サンダーバードにせよ、本作にせよ、スーパーメカ映画の根底には、やっぱりアナログなガッツが欲しい。今回、久しぶりに見て、劇場で初めて見た興奮が蘇り、年甲斐もなく熱くなったのです~