負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の飼い犬にだけは手を出すな!怒らせたらヤバイ奴映画NO1「ジョン・ウィック」

50代でキリストのように復活を遂げたキアヌ・リーブスの快作。この映画は中高年者のための復活ガイドだ!

(評価 82点)

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人間の人生は分からない。怒らせたらヤバイ奴映画というジャンルで再生を果たし、50代から見事にフランチャイズを作り上げた偉業は只物ではない。本作はいうなれば人生リバイバルマニュアルなのかもしれない。

 妻を亡くし、傷心の一人の男の元に届けられた宅急便。それは、一匹の小さな子犬だった。妻の形見の子犬と始まるささやかな暮らし。しかし、その生活が踏みにじられた時、男は一匹の龍になる!

 あのキアヌ・リーブスがブロック・バスターではない小さな映画で復活を果たしたとの風の噂を伝え聞き、気もそぞろに見た映画は、久しぶりのB級スピリッツ満載の文句無しの傑作だった。

 冒頭、亡くしたばかりの妻の動画が映るスマホを手に泣くキアヌ。何度見てもグっとくるこのシーンが実にいい。本作は、一匹の犬を殺されたかつての殺し屋が、その復讐のためにロシアンマフィアを壊滅させる、実に分かりやすいが荒唐無稽でもある話。

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 しかし、それを素直に納得させる力が、このシーンでのキアヌの涙にはある。長いキャリアで常に山と谷の振幅を味わい、あの“ぼっちメシ”でも一躍有名になった男の真の涙と言えば言い過ぎか。たかが犬一匹のために、という人もあるけれど、犬一匹だからこそ逆にこの負け犬は納得できた。家のインテリア全体が、デザイナーズ・ブランドのような無機質な空間で、肌のぬくもりを感じさせてくれる存在といえばやはり犬なのだ。この子犬一匹と暮らすジョン・ウィックの暮らしぶりを端的に描くシーンが素敵だからこそ、男が漢になり、覚醒する瞬間が生きるのだ。

 ベースメントに埋めた、殺し屋時代のギアを封印したコンクリートを打ち砕き、手にした武器で向かう復讐相手は、ロシアンマフィアのバカ息子。覚醒したヤバイ奴が天下無双になるカタルシスをこれほどまでに堪能させてくれる映画は他に無い。

 ロシアンマフィアのボスだけが、伝説のジョン・ウィックの存在を知っていて、ロシアの魔女バーバ・ヤーガと恐れるところもお約束で血をたぎらせてくれるが、何よりも新鮮だったのは、皆が大好きな殺し屋のキャラクターの描き方。

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 殺し屋だけのギルドがあって、殺し屋だけで流通する貨幣があって、殺し屋ホテルが存在し、というシュールな世界観。思えば映画やフィクションに抜きにしては語れないキャラクターの殺し屋をこんな風に一つの世界観として示した映画はなかったのではなかろうか。

 ロシアンマフィアの巣窟に殴り込み、暴れまわるジョン・ウィックカタルシス。最後のボスとの一騎打ちは、ラスボスとしての役不足なのだけが、難点と言えば難点か。しかし、その後、円環手法でイントロのシーンに戻り、ちゃんと出てくるのが、新たな相棒の犬なのが、また泣ける。

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 その足取りも似た一人と一匹が向かう先は、あっぱれなジョン・ウィックフランチャイズだった。本作が2以降も大ヒットを飛ばしたのは周知の通り。元々、本作が、スタントマンであった盟友チャド・スタエルスキにショー・ケースとしての場を与えたいというキアヌ・リーブスの熱き友情から生まれたというのだから、キアヌへの好感度も増すばかり。若くは見えるがキアヌもれっきとした50代、となればキアヌ・リーブスこそまさに中高年者の人生再生のショー・ケースというべきだろうか。

 かくしていまやマルチメディアに拡散し、立派なフランチャイズとなったジョン・ウィック。そのジョン・ウィックのフィギュアは今や各種さまざまなものが出ているけれど、あの一人ぼっちで昼飯を食っているところをパパラッチされて一躍有名になった”ぼっちメシ”フィギュアもあるとかないとか・・。  

まるで自分そのものの姿を見ているようなその”ぼっちメシ”フィギュア。是非、手に入れたいと思う今日この頃なのです。