負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬の悲しきどんでん返し「スティング」

映画の醍醐味の一つ、どんでん返し。そのどんでん返しが裏目に出ることもある悲しきサンプル映画 (評価 68点) 

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世にも名高き名作との誉れも高い「スティング」だが、負け犬にとっては苦い思い出の映画でもあった。

 意外などんでん返しに酔わされる。それは、映画を見る上での至上の楽しみともいえる。しかし、それを味わう絶対的な条件の一つに、何の予備知識もなく、その映画と向き合うということがあるのもまた確か。

 実は本作は、負け犬がまんまとその不文律を犯して、苦い思いを抱いた映画でもある。

 負け犬が、まだガキの頃、文庫本で出ていた本作のノベライズを読んだことがあった。その時の衝撃は凄かった。何が凄かったかは言うまでもない。そのどんでん返しだ。その時、負け犬は、人生で初めて痛快に騙される快感に目覚めたといっていい。でも、本作の場合、その初体験がノベライズだったことがいわくつきになってしまう。

 その時、負け犬は、ノベライズで読んだ、どんでん返しに感嘆するあまり、如何に、「スティング」という映画が凄い映画かをクラスの連中に得意満面に吹聴して回った。ところが、そもそも映画など見もしていない。ただそのノベライズを読んだだけなのにだ!

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 そして、数年後、(確か「水曜ロードショー」だったと思う)いよいよ本作が、TVで初放送される日がやって来る。当時は、市販のソフトのビデオなど、影も形も無い時代、映画の実物と出会うには、劇場でのリバイバルか、もしくはTVの洋画劇場での放送を指折り数えて待つしかなかったのだ。

 やがてやって来た放送日、ワクワクしながらTVの前に陣取って、映画が始まるや一心不乱にブラウン管(この言葉も既にアンティークですよね)を見つめることと相成った。

 ところが、どうしたことだろう、あれほど友達に吹聴してまわっていたはずのその映画が、さして面白くもない。その理由はすぐに思いついた。既にノベライズを読んでしまい、プロット展開の隅々まで知り尽くしていたからに他ならない。

 そして、やがて、あのあまりにも有名なクライマックスのどんでん返しの瞬間が訪れる。一緒にTVを囲んで見ていた家族が無邪気に腰を抜かして驚いて、感極まる雰囲気のその中で、この負け犬だけがただクールに冷めていた。その時のまるで砂を噛むような味気無さたるやもう、今、思い出してもどこか苦い舌触りのようなものが口中に湧き上がってくるほど。

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 その時、負け犬はつくづく思ったものだ。どんでん返しには気を付けよう。

 でも、既にこの負け犬は、映画鑑賞上のエチケットを破ってしまっている。ある映画にどんでん返しが仕掛けられているとバラしてしまうだけで人はその映画に過剰な期待を抱いてしまうもの。でも、本作に関しては大丈夫、そのノベライズを読んでもいない限りは、きっとあなたも痛快に騙されてしまう事でしょう。

 ポール・ニューマンロバート・レッドフォードの黄金コンビ、そして監督が名匠のジョージ・ロイ・ヒルとくれば天下無敵。マーヴィン・ハムリッシュのあのテーマ曲とともにクラシカルなイラスト仕立のタイトルが画面に出て来た瞬間から、古き良きスタイリッシュなコン・ゲームに酔わされることは間違いなし。

 現に、この負け犬も、最初のトラウマを乗り越えて、今では、その雰囲気を存分に楽しんでいる。

 知りたくてしょうがない、どんでん返しのタネ明かし。でも、それを先に知ってしまったら、お菓子の味は半減してしまう。いや、半減どころか、負け犬の本作にまつわる体験のように無味乾燥にもなりかねない。何とも悩ましい”どんでん返し”というお菓子。

 お互いにマナーを守って、正しく味わいたいものですね