負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう崖っぷちの映画録。また、たまに<映画をエンジョイ英語もエンジョイ>と題して、映画の実際のスクリプトを原文と翻訳でご紹介。英語学習気分もちょっぴりどうぞ!

<映画をエンジョイ英語もエンジョイ>負け犬の真実の才能の証明「トゥルー・ロマンス」

24才の映画オタクが書いた一本の脚本が、全ての始まりだった!タランティーノのメジャー脚本デビュー作。その本編屈指の名シーンをオリジナル・スクリプトでここに再現!

(評価 84点) 

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1987年、のめり込んでいたアマチュア映画作りに頓挫した一人のビデオ屋の店員が、映画への思いのたけを全てブチ込んだような一本の脚本を書き上げた。青年は、その脚本をハリウッド中の映画会社に送りつけるが、結果は散々だった(こんなクソみたいな脚本を送りつけてくるお前は、頭がオカしいという返信すらあった)。しかし、とあるC級映画会社のプロデューサーがその出来映えに感嘆し、脚本を格安の値段で買い上げる。そして、それが高校もロクに卒業すらしていない、ただのビデオ屋の店員のハリウッド・デビューのチケットとなった。その青年の名はクェンティン・タランティーノ

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 ニコラス・レイの監督デビュー作「夜の人々」にインスパイアされ、エルビス千葉真一香港ノワールにコミック・ブック、それに夜更けのダイナーで彼女と映画について語りまくり、といった映画オタクの夢の結晶が凝縮されたような映画「トゥルー・ロマンス」。

 当時、タランティーノに憧れを抱かない映画フリークなど一人もいなかった。自分で書き上げた脚本でデビューし、後にカンヌ映画祭まで制し、たちまち頂点をきわめた男。一発屋と陰口を叩くものも勿論いた。しかし、それが真の才能であることは、誰もが「トゥルー・ロマンス」における最高のシーンと認めるシークェンスにまぎれもなく結実している。

 ポン引きのドレクセルからドラッグを奪い、恋人のアラバマパトリシア・アークェット)と一緒に逃避行を続けるクラレンス(クリスチャン・スレーター)。そのクラレンスの父親クリフ(デニス・ホッパー)が暮らすキャンピングカーに、ドラッグの元締でマフィアの幹部のココッティ(クリストファー・ウォーケン)が息子の居所を聞き出しにやって来る。

 ココッティと向かい合って座らされ、自分が助からないことを悟ったクリフは、ココッティに人生最後のブラフを仕掛けてみせる。

 そのシーンのオリジナル・スクリプトによるダイアローグは以下のようなもの

 

息子のことなど知らない、というクリフに、ココッティは全てお見通しだといわんばかりにこう言う

COCCOTTI

Sicilians are great liars. The best in the world. I'm a Sicilian. And my old man was the world heavyweight champion of Sicilian liars. And from growin' up with him I learned the pantomime. Now there are seventeen different things a guy can do when he lies to give him away. A guy has seventeen pantomimes. A woman's got twenty, but a guy's got seventeen. And if you know 'em like ya know your own face, they beat lie detectors to hell. What we got here is a little game of show and tell. You don't wanna show me nothin'. But you're tellin' me everything. Now I know you know where they are. So tell me, before I do some damage you won't walk away from.

(ココッティ/シチリア人は大嘘つきだ。それも世界一の大嘘つきだ。その上、俺の祖父さんは、シチリア人の大嘘つきの中でも世界ヘビー級王者クラスだった。そんな祖父さんと一緒に暮らしていりゃ、嫌でもパントマイムってものが分かってくる。たとえば、男がその場しのぎに嘘をつく場合、出来るパントマイムのパターンは17種類ある。いいか、男は17種類だ。ところが、女は20種類出来る、しかし、男はあくまでも17種類なのさ。それをしている時の自分の顔つきまで分るほど、そのパントマイムが出来るようになってみろ、ウソ発見器だってまるで歯が立たねえ。今、俺たちがやっているのは、ちょっとしたゲームみたいなもんだ、ジェスチャーゲームてやつだ。あんたは、俺に頑なに悟られまいとしているが、その仕草ですべて分かっちまってんだよ、もうすっかり、あんたが奴らの居所を知っているのが知れちまった。だから話しなよ、俺があんたを立って歩けなくなるほど、ブチのめす前にさ)

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こう言われたクリフがココッティにブラフを仕掛けにかかるのだ

 

CLIFF

You know I read a lot. Especially things that have to do with history. I find that shit fascinating. In fact, I don't know if you know this or not, Sicilians were spawned by niggers.

(クリフ/実はな俺は読書家なんだ。特に歴史についての本はあれこれと読んでいるんだ。その中で、とびきり面白いものがあった。実際のところ。あんたが知っているかどうかは知らないが、シチリア人の生みの親は黒んぼなんだよ)

COCCOTTI

Come again?

(ココッティ/何だって?)

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CLIFF

It's a fact. Sicilians have nigger blood pumpin' through their hearts. If you don't believe me, look it up. You see, hundreds and hundreds of years ago the Moors conquered Sicily. And Moors are niggers. Way back then, Sicilians were like the wops in northern Italy. Blond hair, blue eyes. But, once the Moors moved in there, they changed the whole country. They did so much fuckin' with the Sicilian women, they changed the blood-line for ever, from blond hair and blue eyes to black hair and dark skin. I find it absolutely amazing to think that to this day, hundreds of years later, Sicilians still carry that nigger gene. I'm just quotin' history. It's a fact. It's written. Your ancestors were niggers. Your great, great, great, great, great-grandmother was fucked by a nigger, and had a half-nigger kid. That is a fact. Now tell me, am I lyin'?

(クリフ/本当だよ。シチリア人は黒人の血を受け継いでいるのさ、心臓が脈うつその血にだよ。ウソだと思うなら、調べてみな。何百年も前、シチリアを征服したのはムーア人だったろ。ムーア人は黒人だった。かつて、シチリア人は、イタリア北部で暮らす普通のイタ公だったんだ。ブロンドの髪に青い目をしたな。しかし、ムーア人がやってきた途端、国ごと変わっちまった。ムーア人シチリア女と好き放題にやりまくった。そのおかげで、すっかり変わった血脈のせいで、そのブロンドの髪と青い目が、黒い髪と浅黒い肌といった今みたいな具合になっちまったって訳さ。面白くて仕方がねえよ、今になって考えてみてもさ、だって数百年経った今でも、シチリア人が黒んぼの遺伝子を持ってるってことをさ。俺はただ歴史的事実を述べている。本当の事さ、書かれてあるんだから。お前らの祖先は黒んぼなんだ。お前らのひい、ひい、ひい、ひい、そのまたひい祖母さんは黒んぼどもに姦られたんだ。だから黒んぼの混血を生んだ、本当だぜ。ウソだと思うかい?)

 

 クリフのこのセリフが、イアリア系マフィアのココッティの逆鱗に触れないわけはない。ココッティは激情のあまりクリフを拷問して吐かせることも忘れてその額に弾丸一発ブチ込んでたちまち撃ち殺す。つまり息子の居所を知らせないクリフの我が身を呈した作戦勝ちなのだ。

 このシーン。ココッティのクリストファー・ウォーケンとクリフのデニス・ホッパーの二人が、最高の台本を得て役者冥利に尽きるようなパフォーマンスを披露してくれる。それにしても、ガキ同然の24才の若者にこれほど成熟した気の利いたシーンとダイアローグが書けるものだろうか。まぎれもない真実の才能の証といえないでしょうか。

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 ちなみに最初のココッティのセリフの「game of show and tell」の「ショー・アンド・テル」は、人に何かを説明する時に、それに関わる具体的なアイテム、つまり物品を提示しながら説明するという慣用句。

 

 この二人が応酬するセリフを見ているだけで、あの名シーンが如実に瞼に浮かんできませんか?やっぱりタラちゃんは映画の申し子なのでしょうね~