負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の一発屋が生き残れた理由とは「ロッキー2」

どこの世界にもいる一発屋。華々しく打ちあがりそのまま星の藻くずとなるはずの一発屋がここまで生き残ったのは何故だろう?そこにはロッキーとマンガ家との意外な関係があった。あふれるほどの感動と共に、今だからこそ「ロッキー2」は色々なことを教えてくれる

(評価 80点)

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「ロッキー」という映画が出現した時、全てのメディアの文体が祝福するかのように小躍りしていた。まったく売れない三流役者がたまたまTVで見かけたボクシングの試合からインスピレーションを得て、わずか三日で書き上げた脚本を自分の主役というボーナスすら得て映画化し、それがなんとアカデミー賞にも輝いた。どのマスコミもこぞってペンも折れよとばかりに書き立てたサクセスストーリー。そして、当然のようにスタローンはその勢いに乗って、次々と作品を連発する。

 ところが・・・。自信満々に放った作品が、どれもこれもこれ以上はないほどの大コケをする。そして全てがパタリと止まった。誰もスタローンのことなど見向きもしなくなったのだ。そして囁かれる、「ただの一発屋だったよね」の声。ドン底に窮したら打つべき手は決まっている。ナンバー2を作るしかない。

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 スタローンが続編に着手した時の反応は実に冷淡だった。「やっぱり続編かよ」「監督までするのかよ」という声しか聞かれなかった。だが、やがて完成し、作品が公開された時、すべての人が少なからず驚いたことがある。その展開が実に地味だったことだ。

映画は分かり切ったことを何の衒いもなく愚直なまでに実に丹念に積み重ねていく。

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 ラッキーチャンスをものにし、華々しく脚光を浴びたロッキー。遠回りはしたが、エイドリアンと結婚しささやかな幸福を手にする。CM契約も果たし、どうやらドン底は抜け出した。舞い上がって分不相応の浪費だってしてしまう。しかし、客寄せパンダの役は果たせず路頭に迷う。しかし、最愛のエイドリアンは自分がリングに戻ることを望んではいない。だったらカタギになるしかない。

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 ンなこと分かり切っているよ、誰でも言いたくならないか。しかし、スタローンは決してペースを早めない。決して歩調を早めずあくまでも走らずに歩く。

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 学歴の無さが災いし、やっと手にした肉体労働もままならず、果てはミッキーに泣きついてジムでの半端仕事するまで落ちぶれた。そこにリターンマッチの声がかかり、エイドリアンの反対を押し切って試合に臨むが、まるで熱が入らず。そこへ出産の知らせとともにエイドリアンが危篤状態になったとの報せが・・・。

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 スタローンが2時間の上映時間のうち、このドラマ部分に費やす時間は何と実に90分。でも、スタローンだけには分かっていた。ロッキーはこんな人間なのだという信念にも似た確信があったからだ。そして、そのドラマを丹念に描くからこそ最後に爆発するボルテージが最高潮に達することを。昏睡状態にあったエイドリアンがついに目を覚ます。そしてリターンマッチが迫る枕もとのロッキーに向かってポツリとひとこと言う「勝って・・」

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 ここからの怒涛の30分で如何に熱く燃えるかは、ちょっと言葉では言い表せない。ビル・コンティのテーマに乗り、ここからエンディングに向かってロッキーは一気に全力で走り出す。後ろを走るのは子供たちだ。あざとくて普通ならこんなシーンは撮らない。しかし、ロッキーはこうでなければならない。スタローンは信じていたのだ。

 ラスト。スタローンは叫ぶ「I did it!」決して自分を見捨てなかった老トレーナー、ミッキーと肩を抱き合うストップモーションで映画は終わる。しかし、スタローンの人生は、まさにここから始まった。

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この映画を見ると、決して人生は1から始めなくてもいいと思えてくる。1の後につまずいても2から始めればいいじゃないかと思えてくる。2から始める人生があったっていいのだ。

 さて、ここからが本題。確かにこのロッキー2がスタローンのブースターにはなった。でも、そもそもここまで長くキャリアを続けてこれた理由は何だろう?

 昔、スタローンが色々な映画に出始めた頃、とあるアクション映画のキャンペーンのために来日したことがあった。その時、スタローンに同行し取材していた記者がこんなことを書いていた。

「スタローンに夜のインタビューは禁物だ。だってスタローンは、夜の10時には寝てしまう・・」そうスタローンの長いキャリアの秘密は他でもない、睡眠にあった。

たったそれだけかよ!なんて言われそうだが、人間は所詮、食って、排泄して、寝るというサイクルを繰り返すだけの生き物。その不可欠なファクターの一つ、睡眠をおろそかにしたら必ずリバウンドがやって来る。人間には一日のオーバーホールが必ず必要だ。

睡眠といえば、徹夜がつきもののマンガ家に典型的なケースパターンがある。睡眠時間は2時間で充分だ!と豪語していた、某2大巨匠マンガ家が、そろって早い年齢で早逝してしまった。裏腹に、どんなに忙しくても睡眠時間だけ絶対に確保することをモットーにしていた某ゲゲゲの鬼太郎なマンガ家は93才まで存命で活躍をされた。これを聞けば火を見るよりも明らかだ、と思いませんか?

 ビジネスの世界であれ、どのようなジャンルだろうとロングスパンで活躍したければ睡眠がもっとも大切なのです。だからお休みなさい~