負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう崖っぷちの映画録。また、たまに<映画をエンジョイ英語もエンジョイ>と題して、映画の実際のスクリプトを原文と翻訳でご紹介。英語学習気分もちょっぴりどうぞ!

負け犬の風邪は禁物クシャミだけには気を付けろ「サブウェイ・パニック」

制御不能の地下鉄が突っ走る。70年代パニック・サスペンスの金字塔。車内ではマスクは必ずお付けください

(評価 84点) 

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人間クシャミ一つでエラいことになってしまったという話。たかが風邪とナメるなかれ。それもこれもマスクをしなかったエチケット違反の罰なのか。

 ニューヨーク市名物の地下鉄。そのベラム駅発123号車に次々と乗り込んでくる男たち。男たちは、何故かお互いをブルー、グリーンといった原色で呼び合い、席に座りもせずものものしく乗客を見つめている。列車が28丁目を過ぎた頃、突然、男たちがコートから覗かせてみせたのは黒光りするサブマシンガンの銃身。「この地下鉄を乗っ取った!」。ブルーと呼ばれるリーダー格の男が乗客に向かってそう言うと、ジョークだと思って乗客たちは皆笑う。

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 しかし、それはジョークでも何でもなかった。かくして、前代未聞の地下鉄ハイジャック犯とニューヨーク鉄道公安局との息詰まる駆け引きの火蓋が切って落とされる。

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 今更ながらのパニック・サスペンスの超の字がつく程の傑作。負け犬みたいなコアなセブンティーズなら「フレンチコネクション」な空気感そのままの地下鉄が全編にわたって舞台になっているというだけでもう辛抱たまらん映画なのです。

 ルックスが似ているのもむべなるかな。キャメラは名匠オーウェン・ロイズマン。そのスーパーリアリズムなザラついた質感からは、70年代の息吹が今もこちらにストレートに伝わって来るほど。

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 主演の地下鉄公安局、警部補ガーバー役のウォルター・マッソーがいい。乗客を人質に身代金100万ドルを要求してきたハイジャック犯のリーダー、知性派のブルー(ロバート・ショウ)と時には飄々と、時には熱くデッド・エンドなせめぎ合いを繰り広げ、事態を解決に導こうとする。

 身代金受け渡しのタイム・リミットは午後3時13分。

 当然、ポイントは閉鎖空間、更にはATCによって常に動きが追尾されている地下鉄でどうやって身代金を受け取って逃亡を図るのかという所。映画はレールの上をひた走る地下鉄のようにその一点に向かってヒートアップしながら収斂していく。

 結局、身代金受け渡しのトリックは、ATCで常時マークされているという点を逆手に取ったアイデアなのだが、そのキーパーソンとなるのがマーティン・バルサム演ずるグリーン。結局、映画をかっさらってしまうのがこのグリーンなのだ。どうやら、元は鉄道関係の仕事についており列車のオート制御についても熟知しているこのグリーンは、冒頭、出て来た時からクシャミを連発し、明らかに風邪をこじらせて文字通り青い顔をしている。

 クライマックスでガーバーにトリックを見破られ、肉迫する中、他の仲間を尻目に大金を手に入れ、ただ一人地上へ逃げ延びる。そして、それこそが今も語り草になっているエンディングへの序章となる。

 交渉の最中、グリーンらしき人物像のヒントを得たガーバーは数日後、グリーンとおぼしき人物を訪問していく。

 当のグリーンは、それとも知らず、中年男の一人住まいそのままのアパートの一室(インスタント食品のトレーが山と積まれたディテールのリアリズムがいい)で札束の金を愛でてはしゃいでいる。そこへガーバーがやって来て血相を変えて札束を隠すのだが。

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 グリーンのクシャミだけで見事にオチをつけてみせるラストのやり取りのテイストは是非とも本作をご覧になって体験のほどを。

 何はともあれラストカットのドア越しのガーバーの表情には、セブンティーズという時代の醍醐味が、そして本作が持つ面白さのエッセンスの全てが凝縮されている。

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 どーせ年を取るならこのガーバーのウォルター・マッソーのような味のある顔になりたいものですよね~