負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬さんの物事の起源はオリジンにありという件「ゴジラ」1954年版

やがて公開される「ゴジラVSコング」を前に目撃した、永遠不滅のクールジャパンのキャラクターのオリジンは想像を遥かに上回る素晴らしさだった

(評価 84点)

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日本が世界に誇るキャラクター、怪獣王ゴジラ。不思議なことに恥ずかしながらロクにちゃんと見ていなかった。今更ながら温故知新ではないけれどその実物を見たら、温故知新どころか未だにHOTなそのエキサイティングな迫力に感動した。

 半世紀という言葉があるけれど、本作、半世紀どころか一世紀にもせまろうというほど前の映画、誰もがチャチいんじゃね、と思うはず。しかし、目撃した実物は、時代ゆえの古さなど微塵も感じさせないものだった。その最大の要因は美しいハイ・コントラストのモニクロームの映像。

 1954年、Gプロジェクトとして発動した本作の製作にあたって、製作期間との兼ね合いから選択された日本の伝統芸ともいえる着ぐるみ。本作におけるその着ぐるみGの登場シーンは圧倒的に夜間のシーンが多い。

 Gが登場するシーン。いわば永遠不滅のレジェンドが映画のスクリーンという媒体に初めて姿を現す瞬間は、映画が始まって21分53秒後。小笠原にあるとされる大戸島の山脈の稜線上に、志村喬演ずる山根博士以下、島民を見下ろす形でその上部を顕わにする。

 その後、永遠に映画史に刻まれることになる圧巻のクライマックス。東京上陸後の破壊のシークェンスにおけるGは、夜間という設定とモノクロームの映像のため、ほぼただの漆黒のシルエットといっていい。しかし、その漆黒ゆえに、核や戦争、破滅、世紀末の黙示録といった様々なメタファーを塗りつぶされたシルエットに封じ込めることで、逆に鮮やかにそれらを想起させるシンボルに昇華する存在にGが成り得たことを改めて実感した次第。

 当時、「鬼滅の刃」すらひれ伏す、一番館でのロードショー公開だけで960万人の観客を集めたという本作。劇場にかけつけた人々は、このGの威容に釘付けになったのではなかろうか。それほどまでに、今見てもそのインパクト、存在感は圧倒的。また円谷英二によるその伝説的な特撮のクォリティーの高さは驚異以外の何物でもなく、辛抱たまらず、ここにアラカルトとしてイントロダクションしてしまったという次第。

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 Gはオキシジェン・デストロイヤーの藻屑となって骨と化したが、この瞬間からまさしくGODとなって不滅の生命を得た。

 これもレジェンド、半世紀以上の時を超え「キングオブモンスターズ」というハリウッド映画でも堂々とその旋律を高らかに響かせてくれた伊福部昭のテーマ音楽は言うに及ばず、今回改めて、その起源たるオリジンこそすべてのエッセンスが凝縮された最高傑作であると思い知らされた。

日本の着ぐるみ文化と怪獣スピリッツを確かに受け継ぐ、レジェンダリーのモンスター・ユニバースの完結編「ゴジラVSコング」の前に、このモンスター・バースを是非とも体験あれ!

 何はともあれ、山根博士の娘役の河内桃子さんのけなげな可愛らしさは必見ですヨ~