負け犬的映画偏愛録

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負け犬さんの方向性皆無の人を怒らせたらコワイよシリーズの最高傑作とビジネスモデルにおける発想の転換という件「座頭市物語」

その男、盲人にして居合の達人。而してその強さは鬼神の如し、時代劇史上、不滅のアンチヒーローここに参上

(評価 88点)

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日本には誇れるものがいくつもある。たとえば国境の壁を軽々と超えてみせるキャラクターたち。その代表格は言うまでもない、キングオブモンスターのゴジラ。そのゴジラと双璧を成す知名度を誇るのが、海外ではブラインズ・スォーズマンとして名高い時代劇のヒーロー座頭市だと言っていいのではないか。

 二枚目で売り出してはいたがまったく売れなかった勝新太郎が半ばやけ気味に盲人にして極悪非道な検校を演じた「不知火検校」。その作品で盲人という設定でありながら皮肉なことに勝は光明を見いだし、続いて背水の陣の覚悟でブチ上げたのがこの盲目の侠客ヒーローの座頭市だった。

 ハンディキャップがあってダーティで、という、それまで誰も考えもしなかった、発想の転換。ビジネスモデルでいえばそれまでのインフラを完全に覆すパラダイムのシフトというものがここにはあった。

 盲人だがバクチもすれば女も抱く、しかし、卑しさに身をやつしながらも、弱者を虐げるものに対しては容赦なく牙を剥き、超人的な力を発揮する。こんなヒーローにシビレない大衆がいるわけがない。かくして勝新太郎無き今も永遠不滅に輝き続ける座頭市の記念すべき第一作「座頭市物語」、今から半世紀以上も前の映画、それなのにエキサイティングなその面白さは微塵も色褪せていない。

長寿シリーズの第一作といえば、たとえば007がそうだけど、どこか未形成、あくまでもルーツ的な、たどたどしさがどうしても付きまとう。しかし、このシリーズに限って言えばそれはない、というか有り得ない。この第一作こそが不倒の大傑作だからだ。本作には時代劇というものに観客が求める面白さが全て詰まっていると言っても過言ではない。

時代劇ならではの様式美、ため息が出るほどに美しい陰影豊かなモノクロームの映像、そして弱者が強者を打ち倒すヒロイズムのカタルシスに、最後は運命の宿敵との頂上決戦。普通のシリーズものの映画の場合、ワンパターンを回避するため、作品ごとに色々な趣向が凝らされる。しかし、座頭市シリーズがユニークなのは決してパターンから逸脱することなく、その路線を頑なまでに固辞しリフレインしつづけていること。

これもまたビジネス戦略としてはある意味、逆転の発想といえる。客が離れようが構わない、座頭市はこうあるべきだというクリエイターでもある勝新太郎の信念の賜物でもある。しかし、そうしたスピリチュアルな感覚は必ず画面に滲み出る。

座頭市シリーズはこの第一作目で満遍なく打ち出されたそうした信念を親の株式が子会社に配分されるが如く受け継いで成り立っている。インパクトの弱体化は多少なりともあっても、その分、息は長い。それに決して消滅しないのは、未だに座頭市というキャラクターが世界中で愛され続けていることからも分る。

何にせよこの「座頭市物語」何回見てもどこから見ても間違いなくシビレる作品である。日本が世界に誇るキャラクタービジネスに先鞭をつけたルーツとして、金字塔的な傑作に間違いはないのだ。

かくしてジャパン発のキャラクターとしてゴジラと肩を並べる座頭市。その老舗のようなシリーズでもクロスオーバーとして、あの三船敏郎の「用心棒」や香港でブルース・リーとその人気を二分したジミー・ウォングとも対決した。CG技術で何でもできるこのご時世、「ゴジラVS座頭市」なんて映画、誰か作ってくれないもんでしょうかね~