選挙とは候補者の販売戦略を競い合うゲームだ
(評価 80点)
1972年の作品の本作。しかし、今でも政治、それも選挙というトピックを扱った作品としていささかも古びたところなど微塵もなく本国でも未だにベスト1にランクされる快作だ。
トランプvsバイデンの狂騒劇もあって、久しぶりに見てみた。この作品、いつもそうだが、見始めるや最後、テンポ良く繰り出されるエピソードで解き明かされる選挙のメカニズムにあれよあれよと目を奪われるうちにエンディングまで見入ってしまう。
ストーリーを牽引するのが選挙参謀のルーカス(ピーター・ボイル)。このルーカスと二人三脚で老獪な共和党候補ジャーモンと対決するのが若きビル・マッケイ(ロバート・レッドフォード)。
ビルがルーカスに導かれジャーモンに立ち向かうテイストはどこかスポ根映画すら思わせる。しかし、そのうちビルは自分が選挙キャンペーンという一つの巨大なシステムの歯車と化していることに徐々に気付き苦悶し始める。
中盤のジャーモンとの公開討論、ディベイトマッチの生中継は、さながらボクシングの試合のような緊迫のシークェンスとなっている。そこでビルは巨大システムに組み込まれかけている自分を燦然と振り切り自己の主張を燦然と展開し、対戦相手のジャーモンのみならずルーカスまでをも圧倒してのける。
このシーンは本当に素晴らしい。この後のシーンもそうだが、政治家というのは所詮はプロパガンダを如何にスピーチで効果的にプレゼンできるか、その才能の産物に他ならないことを痛感させられる。にしてもケネディを思わせる若き政治家を演じさせたらレッドフォードはまさに天下一品だ。まさに誰でも一票投じたくなる。
そしてドキュメンタリータッチながら決して軽快さを失わないその圧倒の演出。監督はこの時、レッドフォードと組んで上り調子だったマイケル・リッチー。この作品が次作のこれもまた傑作「がんばれベアーズ」のあの珠玉のタッチの布石となる。
とにかくこの作品、選挙も政治も興味はないというノンポリの人におすすめです。正真正銘のノンポリの負け犬が言うのだから間違いありませんよ